匂いに関する断章

■娘が父親の下着と一緒に自分の下着を洗濯しない理由
よく年頃の娘が、父親の下着と自分の下着を一緒に洗濯するのを嫌がるという話がある。
それはなぜか?
「臭いから」という理由は科学的でない。
なぜなら、汗臭い男が好きな女子でも、父親の汗臭さは耐えられないという。
これは、親父が加齢臭を発散させているという理由ではないのである。

原因をご存知でしょうか?
じつは、この話は、遺伝子が原因しているのである。


■遺伝子は匂う
ウィトキンス博士は、44人の男子大学生と49人の女子大学生に協力を求めて「異性の匂い」について実験をした。

それぞれの男性は新しい木綿のTシャツを渡され、週末の間それを着て過ごした。
食事や香水など、他の匂いの要素が入り込まないようにして、翌週そのシャツは実験室に届けられた。
女性は、Tシャツの匂いを嗅ぎ、好感度の順に点数をつけていった所、ある特異な現象が認められた。

その特異な現象とは、点数と、別に調べた各女性と各男性のMHC遺伝子の異なる比率とは、見事に比例したのである。

つまり、女性は、「匂いによって、自分と異なるMHC遺伝子を持つ男性に好感を持つ」のである。

なぜ自分と異なる遺伝子の異性に惹かれるのか?
この理由は、なぜ「男女」があるのか?という疑問を説明するのと同じである。

それは、遺伝子が近い男女によって生まれる子孫は、排除できるウイルスはあまり多くならず、異なった遺伝子を持っている場合は、子どものウイルス排除機能は強化されるという理由による。
すなわち子孫の免疫の多様性を持たせるために、違った遺伝子を持つ雌雄の交接といった無駄で効率の悪い生殖をするわけである。

以上の実験により、「年頃の娘が、父親の下着と自分の下着を一緒に洗濯するのを嫌がる」理由は、娘が自分と極めて近い遺伝子を持つ「父親」を生殖の対象外と認識し親父の匂いを拒絶する為である。

この現象は人間だけか?というとそうではなく、生物全般に見られる傾向だそうだ。

たとえば、マウスでは、このMHC遺伝子セットが、尿中に特有なタンパク質を放出するため、メスのマウスに二匹のオスを選ばせると、メスは尿の臭いをかぎ分け、結果的に、必ず自分と異なる要素が強いMHC遺伝子を持つオスを配偶者として選択することが分かったそうだ。


■家族の肖像
イギリスの科学誌「ニューサイエンティスト」に紹介されたアメリカデトロイトのウェイン州立大学の研究班は、6歳から25歳の子どもがいる5家族を対象に実験を行った。

家族に3日間同じTシャツを着てもらい、家族でない見知らぬ人が同じように着たTシャツと混ぜて、臭いの識別をさせたところ、次の結果が出た。

1) 父母は子どものシャツをほぼ識別できた。
   特に母は鋭敏だったが、兄弟の違いまでは識別できなかった。

2) すべての子どもは父のシャツを識別できた。

3) 母のシャツは、9歳~15歳の子どもだけが識別できた。

4) 家族と他人のシャツとどちらのシャツの匂いを好むかを聞いたところ、他人の匂いのほうに好感を持つ人が親子とも圧倒的に多く、特に母が子どもの匂いを、子どもが父の匂いを嫌った。

5) 異性の兄弟姉妹が互いの匂いを嫌悪したが、同性間の嫌悪は見られなかった。

研究班は、この反応こそが、「近親相姦防止のメカニズム」と説明した。


■フェロモンと香水の関係
香水は異性の魅力を増す香りといわれる。それは、まるでフェロモンの代用品のように。

香水が甘い香りであるように、フェロモンの匂いも「甘い匂い」と言われる。
しかし実際にはフェロモンとは「体臭」である。

動物は発情したときには体臭が強くなるがフェロモンも体臭腺から出るのである。
ちなみに、オスフェロモンといわれる「α-アンドロスタンジオール」は「わきが」の臭いからできている。
決して「ワキガ」は甘い匂いではない。
しかしワキガの匂いを数万倍に薄めると「甘い匂い」のフェロモンに変化するのである。

実際この化合物は男性が嗅ぐと大変いやな臭いに感じるが、女性には比較的平気な人が多いということらしい。

高級な香水は、直接嗅ぐと嫌な匂いであるが、実際に体につけてみると、なんとも優雅で甘美な匂いを発する。
本来、香水は清潔な体につけるものではなくて、汗臭い体につけるものである。
すなわち、体臭と混じって甘美な香りにするのが香水の面目なのである。
なぜなら、そもそも香水とは体臭を甘美なフェロモンに変化させる媚薬であるからだ。


■シトラス系の香水は女性限定である
ところで、私は昔から「山椒」の匂いに、なぜかすごくトキメクのである。
しかし私の回りでは、サンショウの匂いにトキメク人が少ない。

最近、クロアゲハがサンショウの匂いに誘われることを知ったのだか、ミ カン科の特有の匂い(シトラス系)がクロアゲハを誘うらしい。
柑橘系に誘われる黒い蝶の印象は、まるで処女の生き血を求める老年の吸血鬼のようである。

柑橘系の匂いは、フェロモンというよりも「若さを感じさせる効果」があるようで、シトラス系の香水は、女性がつけると実際より若く感じるという実験結果がある。

よって、シトラス系の香水は、本来、女性がつけるものであり、男性がつけるものではないと思っている。



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