マキアヴェッリの運命論

今夜もまた、睡眠薬替わりにマキアヴェッリの話でもしましょう。
なぜ、今更 マキアヴェッリについて語るのか?

理由は簡単だ。
先週は泊まりの出張があり、なにか夜にホテルで本でも読もうかと思い、本屋で塩野七生の「マキアヴェッリ語録」を購入し、マキアヴェッリの言葉に酔ったからである。
この「マキアヴェッリ語録」は非常に読みやすい本であるので、是非一読して欲しい本である。

マキアヴェッリや孫子は、戦争や経営に勝つ為のハウツー本のように思われているが、どちらかというとニーチェや孟子と一緒の類の哲学の本であると思う。
しかしニーチェのような難解で意味不明の奇声にも似た言語(アルパ!アルパ!とか(汗)も出てこないので、一種の読み物として楽しめると思う。
この理由は、塩野七生の名訳にあるのかも知れない。

さて、マキアヴェッリを語る上で、これこそマキアヴェッリの神髄と思われるのは、「運命と人間に対する考察」であると私は思う。

私は、まったくイタリア語は判らないので塩野七生の名訳を元にし、少し要約で紹介しよう。(ほんとは全文が良いが長くなるので抜粋要約)

マキアヴェッリ曰く
「今までも幾度となく述べてきたように、人の運の善し悪しは時代に合わせて行動できるか出来ないかにかかっている。ある者は激情で行動して成功を収める者もいれば、慎重に行動して成功する者もいる。
今、栄えている人物が急に没落したり、行動は変えていないのに、運によって栄えたりするのは何故であろう?
その理由は、彼らの器量や能力よりも、彼らの行動が時勢に合ったかどうかによって成功は決定されるものであって、仮に彼らの成功が永続していたのならば、それは時代の要求によって彼らが自分自身を自在に変化させてきた証である。」


「運命は変化するものである。それゆえ人間は過去や現在に成功している自分流のやり方を続けていても時流に乗っている間は上手くいくが、時代に合わなくなれば失敗するより他はない。」

「ゆえに現在隆盛を極めているといって得意になることも無いし、不遇だといって悲観する必要も無い。」

これは、商売を考えると判りやすい。マキアヴェッリにとって、商売は経営能力よりも時代に乗ったか?乗らないか?が最も重要な事だということである。
確かに、経営者に求められる能力は時代を読む目であろうと思う。

戦後、家電で財を成した松下幸之助が、現代に生まれていればIT企業で財を為したでありましょう。経営方法や器量もあるでしょうが、たとえ松下幸之助と雖も、戦後に繊維関係を手掛けていれば、商売替えをしない限り苦戦したと思われます。

以上の話を頭に置いて、いよいよマキアヴェッリの霊感に満ちた言葉を読んでみよう。

運命に対して、人間は時勢に翻弄されるしかないのであるが、それでは運命論者的に、運命に対し、従順に従うという姿勢でいいのか?

これに対して、マキアヴェッリは語る。

「私は、はっきりと言う。
慎重であるよりは、果敢であるほうが良いと断言する。
なぜなら、運命の神は女神であり、彼女に対して主導権を得ようと思うならば乱暴に扱うことが必要なのだ。
運命は冷たいほど冷静に対してくる者よりも、征服したいという欲望を露わにしている者になびくようである。要するに運命は女に似て若者の友である。若者は思慮に富んでいないが為に、後々のことを考えず、より激しくより大胆に女を支配するからである。」


運命は絶対であるが、運命に従順であってはいけない。
なぜなら、力量のある者にとっては、運命とは己の味方につけることが出来る「幸運の女神」に為りうる。ということであろう。

この「運命は女神である」と言う、あまりにも有名な言葉は、マキアヴェッリの鋭い歴史考察より語られたのである。


以上、マキアヴェッリ解説第二話でした。

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この記事へのコメント

2006年06月04日 12:29
キョロ キョロ
誰もいらしてないですね。また一番のりですかね。

人が『運命』を口にするのは、幸福や不幸を極めて強く感じたときが多い。
時として、宗教の匂いがして
時として、慰めであり
時として、いいわけであり
時として、希望であり
裏を返せば、絶望感でもあります。
『運命は冷たいほど冷静に対してくる者よりも~』
なるほど。。。
『運命は絶対であるが、運命に従順であってはいけない』
うーん、深い。。。
『運命の神は女神』
男性の哲学者ならではの言葉。。。
哲学者の多くが男性でありますが、どうしてでしょうかねぇ zzz。。

2006年06月04日 16:32
確かにかなさんの言うとおり、
男性哲学者ならではの言葉に感じますね。
本当に『運命の神は女神』であるなら、
激しく大胆に支配することにより、
寄ってはくるが、激しい支配が継続されると
逃げていく・・・
それが女性ですね。(笑)
故に女神を引き寄せ続けるのは容易ではないと・・・
2006年06月04日 16:58
また寝てるし(汗)
確かに、人が『運命』を口にするのは、幸福や不幸を極めて強く感じたときが多い。
現に、マキアヴェッリは、その天才的な政策論や君子論でその時代の支配者達に嫌われ、幽閉されてしまいました。
マキアヴェッリの著作の多くは牢獄で書かれたものでありマキアヴェッリの書物は禁書とされていましたので認められたのは彼の死後100年以上経過してからであります。>かなさん

確かに、マキアヴェッリこそ、もっとも運命に従順な思想家だった訳です。いわば、女神の扱いが下手であったのです。
思えば、女性を大胆に支配しようとする若者は、運命論を哲学的に語る必要がないです。
そーいえば女性の哲学者っていないよね>カモちゃん
2006年06月05日 05:18
「あと5年早ければ」と嘆くうっかり発明家とか、
「あと10年遅く生まれていれば」と涙を飲む前衛芸術家とか、
やっぱ時代の流れってありますよね。

それにしても、「運命は女だから乱暴に扱わないと征服できない」とかいう表現使っちゃうなんて、マキアヴェッリはかなりバチバチ喧嘩売ってますよねー。
2006年06月05日 12:37
^^;)えーとですね。
皆さん 乱暴を暴力と考えておられますが
マキアヴェッリの意図する意味は「強引」「積極」という意味というように思われます。
女性を食事に誘った場合、「ねーるりたんはさぁー何食いたいのかなぁ?」などど言わず、「今日は二人で、流しそうめんを食おうよ!」というように、デートする前にちゃんと食事する場所くらい考えておけよっ!という意味です>るりさん
NORI
2006年06月07日 01:11
ジャパネットの社長は、マキアヴェッリ論でいくと、やはり成功するタイプなのだろうなあと、ふと思いました。やはり、消費者は自信をもって
勧められるものに弱いと思うんです。背中を押してもらうと、買う気になるもの。押しの強い男はモテルというのにも通じるような気がします。
女の人は誘われるのを待っているものです。
2006年06月07日 10:08
私が大学で心理学科に入学した時に、ある教授が『君たち10年早く、この学科に入りましたね』と言われたことを思い出します。
今は心理学も細かく分かれ、資格もあって引く手あまたですが、あの当時心理学を生かして仕事をなんていうのはほんの一握りの時代でした。
2006年06月07日 15:30
今はうまく時流に乗っているつもりでも、いつ突き落とされるかわからないですね。ホリえもんも村上さんもあっという間にタイホですもんね。驚きました~。しかしエイジさんも出張の夜にまじめな本を読んでますね!こちらもオドロキです~。
2006年06月08日 12:29
きっこの日記を読んだらですね。
やたらISSAは芸能人にモテルそうですが、彼はなんでもてるのかというと、とにかくマメだそうですよ。
やっぱマメさが大事なんでしょうね>noriさん

なんと レセママさんは心理学を勉強してたんですか?
僕は最近 にわかに心理学の再勉強をしております。
糸井重里が言ってましたが、「いま娘を嫁にやりたい仕事をしてる男は10年後は危ない」といってましたが、「人の行く裏道にこそ宝の山」が真実のようですね>レセママ

彼らはうまく時代に乗ったけれど、落っこちてしまったのですね。しかし、同じヒルズに事務所を構える「リーマンブラザーズ」はもっと儲けているのに決して落ちません
そもそも東インド会社の頃から奴らは儲けているのですよ
時代の流れに乗りながら、決して原則から外れないというストイックさが繁栄には大事なようです>スーさん

2006年06月08日 22:27
関係ないけど、NYには「いつか自分の時代が来る」と信じて(思い込んで)いるアーティストもどき(?)な人がすっごい沢山いるそうです。彼らは大抵ドラッグやってたりして、理想と現実のギャップが大きい。「○○になりたい」ってことで「ワナビー"wanna be ○○"」族言われるそうです。
やっぱ、思ってるだけで行動が伴わないと難しいですよね。そういうのは
単なる怠惰だと思います。
2006年06月09日 22:04
ワナビー族かぁ
きっと多くの芸術家はワナビー族だと思う次第である。
夢だけを食べて生きてゆくのも酔狂かも知れないけどね
夢と現実のギャップが埋まる人は一握りかも知れない
いつか現実と向き合う日には、人間力が必要となるのでしょう
でも、そんなニューヨークって素敵な街だと思う

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